ここ数年、保険料の値上がりが度々ニュースで取り上げられています。
マイナス金利政策が保険料にも影響しているとご存知ですか?
2016年1月からマイナス金利政策が始まり、保険業界にも大きな変化がありました。
保険に加入する人への影響が出始めたのは、2017年4月の標準利率引き下げです。
保険料の値上がりの背景、マイナス金利と学資保険の関係、これからも保険料は上がり続けるのかなど、最近は特に値上がりに関する質問が多いです。
そこで、この記事では保険料の値上がりについてポイントを3点お伝えします。
- 保険料が決まる仕組み
- マイナス金利政策で保険料が値上がりする理由
- これからも保険料は上がり続けるのか
マイナス金利政策、標準利率などの用語もわかりやすく解説していきます。
それでは早速確認していきましょう!
学資保険も同じ!保険料が決まる仕組み

保険会社に勤めていると「保険料ってどうやって決まっているの?」という質問をよく頂きます。
モノの場合は材料費や人件費など、何で構成されているかは何となく想像ができます。
しかし、保険料は何で構成されているのかわかりづらく、イメージができないという方が非常に多いです。
まずは、保険料がどうやって決まっているのか、内訳について説明していきます。
保険料=純保険料と付加保険料
保険料は大きく2つに分けられます。
純保険料は、将来の保険金支払いに備えるお金を指します。
保険機能を果たすためのメインになる部分です。
一方で、付加保険料は保険会社の運営費全般のことを言います。

純保険料は2種類の保険料に分かれる
純保険料は更に死亡保険料と生存保険料に分かれます。
疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
死亡保険料は、死亡するリスクを考えて保険料が決まっています。
例えば、20歳の人と80歳の人がそれぞれ1万人いたとして、1年以内で何人亡くなるでしょうか?
亡くなるリスクは80歳の人の方が高いので、死亡保険料は80歳の人の方が高くなります。
一方で、生存保険料は生きることで発生するリスクに対する保険料になります。
学資保険や年金保険などの貯蓄性の高い商品は、生存していることが前提の保険です。
また、医療保険も入院や手術の保障がメインなので、生きていく中で給付金を受け取ることが想定されています。
生存保険料は、生存していることで支払うお祝い金や給付金などがベースになっています。
保険会社はどうやって純保険料を算出するの?
死亡保険料と生存保険料を合わせた純保険料ですが、計算するのにベースが定められています。
それが、予定率という数値です。
予定率には、
- 予定死亡率
- 予定利率
- 予定事業費率
以上の3種類があります。
その中で純保険料の算出に使われるのが、予定死亡率と予定利率の2種類です。
それぞれ何の数値なのかをご説明します。
予定死亡率・予定利率ってなに?

予定死亡率と予定利率は保険業法によって定められています。
それを基に各生命保険会社が商品を開発しています。
つまり、どの保険も同じ数値をベースにして保険料が決まっているのです。
中でも予定利率は、保険料の値上がりと密接に関係しています。
予定利率は、契約者が支払った保険料を何%で運用するかという数値です。
金融庁が発表する標準利率を基に、保険会社が独自に定めている数値を指します。
現在の予定利率は1%が基本ですが、平成元年では5.5%~6.25%と高く、バブルだったことを伺わせます。
保険会社の運用率が下がると、契約者からより多い保険料をもらわないと、商品が成立しなくなります。
そのため、「予定利率の引き下げ=保険料の値上がり」と報道されるのです。

付加保険料とは
付加保険料は主に保険会社の運営費用で構成されています。
算出に使われるのは、予定事業費率という数値です。
運営費用が安いともちろん保険料は安くなります。
しかし、以下のような経費も付加保険料に含まれているので、注意が必要です。
予定新契約費
新規で契約をした場合に必要になる経費です。
契約した際に渡される約款やファイル、本人確認や診査などが含まれます。
それらにかかる費用は保険会社が負担しているため、予定新契約費として算出します。
予定集金費
毎月の保険料の徴収にかかる経費です。
毎月、銀行口座やクレジットカードなどで保険料を支払うにあたり、手数料は保険会社が負担してくれますよね。
保険料の徴収でかかる費用も計算して、保険料の一部に組み込まれています。
予定維持費
保険契約を満期まで管理・保有するためにかかる経費です。
最近話題になったのが銀行の休眠口座です。
口座を維持するにも費用が発生することに驚いた方も多いと思います。
保険も同じで、契約を維持するために莫大な費用がかかります。
今はサーバー管理がメインのため、バックアップ施設を保有して万一時にも備える会社が増えています。
年に一度の契約内容のお知らせも契約維持にかかる費用の一つですね。
マイナス金利政策で保険料が値上がりする理由
2017年4月に予定利率が引き下げとなったことを記憶している方も多いのではないでしょうか?
予定利率が保険料に影響が出ることは上記でも説明しましたが、ここからは2017年4月に何が起こったのかを説明します。
マイナス金利政策とは
一般的に、使わないお金は銀行に預けている方が多いですよね。
民間の金融機関も同じで、中央銀行(日本銀行)にお金を預けて利息を得ています。
2016年1月日本銀行は、金融機関が保有する日本銀行の当座預金に、マイナス金利政策を導入しました。
マイナス金利政策は、名前の通り金利がマイナスになります。
今までの場合、金融機関が日本銀行にお金を預けると利息を受け取ることができました。
しかし、マイナス金利では金融機関が日本銀行に金利を支払わなければなりません。
日本銀行にお金を預けると金利を取られるなら、他のことにお金を使いますよね。
金融機関も同様のことが言え、企業に貸し出したり、投資にお金を回したりとお金の使い道を変えます。
お金の流れを変えることで経済の活性化やデフレの脱却を目指すのが、マイナス金利政策の狙いです。
マイナス金利政策が開始され、住宅ローンや自動車ローンの金利が下がり、住宅や車の購入をする人が増えました。
そのため、経済は活発になったと言われています。
日本銀行の狙い通りに進んでいるように見えるのですが、ここで弊害が出てきます。
マイナス金利で標準利率が引き下げに
2016年10月に標準利率が引き下げになると発表がありました。
2017年4月から1%に定められていた標準利率を0.25%に改定することが決定したのです。
予定利率は簡単に言うと、保険契約者から受け取った保険料を何%で運用するかという数値です。
予定利率は金融庁が定める標準利率をもとに決められています。
つまり、標準利率の引き下げ=予定利率の引き下げということになります。
標準利率引き下げで保険料はどうなるのか
保険会社が契約者から受け取った保険料は、国債を始めとしたリスクの低い方法で運用されています。
しかし、マイナス金利政策により運用益を出すことが難しくなりました。
契約者から預かった保険料を運用しても、なかなかお金を増やすことができません。
そのため、保険料を値上げすることで対応する保険会社が続出しました。
特に、学資保険などの貯蓄性が高い保険は保険会社の利益になりづらく、販売停止も見られるようになりました。
学資保険の保険料が高くなると損をする?
貯蓄がメインの学資保険の場合、保険料が高くなったことよりも返戻率を考えることの方が重要です。
仮にA社とB社に同じ条件で見積もりを依頼したとすると、どちらの保険料が高いかよりも、どのぐらい増えるかの方が重要です。
死亡保険や医療保険の場合、保険料で良し悪しを判断しがちですが、学資保険は少し違うと覚えておいてください。
学資保険に入ってから景気が大幅に回復してもお金は増えない?
学資保険は長いと約20年間の契約になるので、今後景気がよくなった場合も返戻率は上がらないのかと聞かれる方もいらっしゃいます。
この質問の答えは「契約内容による」としかお伝えできません。
生命保険には、有配当型と無配当型の2種類があり、有配当型の学資保険に加入している場合は景気が反映される可能性があります。

生命保険の配当は株式の配当とは異なり、契約時点での予定利率を上回った部分に対して支払われます。
予定利率が0.25%であれば、その年の保険会社の運用が0.25%を上回った部分の配当を受け取ることができます。
しかし、有配当型の学資保険に加入した場合でも、必ず毎年配当があるわけではないので注意が必要です。
配当に期待して学資保険に加入するより、配当が無い変わりに保険料が抑えられた学資保険もあるので、比較することをおすすめします。
予定利率が下がる前に加入した学資保険はどうなるの?
保険契約は、契約時点での利率が適用されます。
既に契約しているものについては、予定利率が大きく下がっても影響はありません。
つまり、保険料が上がる前に加入してしまえば、加入後に保険料が上がっても関係ないのです。
逆に、加入後に保険料が値下げになっても保険料が変わることはありません。
相談時に担当者に確認すると、保険料改定の時期などを教えてもらえるかもしれません。
これからも学資保険の保険料は値上がりが続くのか
今までの保険料の動きをご説明しましたが、一番気になるのは学資保険の保険料が今後どうなるかですよね。
直近では2018年4月の保険料改定がニュースになっています。
保険料改定はありますが、予定利率とは関係なく標準生命表の改定によるものなので、内容が異なります。
標準生命表とは何なのか、保険料はどうなるのかを説明します。
2018年4月に標準生命表の改定で保険料が変わる!
今回の改定でニュースになっているのは以下の2点です。
- 死亡保険料の値下げ
- 医療保険の値上げ
今回の改定は、保険料を算出するために必要な数値をまとめた「標準生命表」が11年ぶりに改定されることに伴います。
正確には「生保標準生命表」といい、公益社団法人日本アクチュアリー会が作成しています。
日本アクチュアリー会は保険業法第122条の2第1項の規定に基づく指定法人であり、保険業法第122条の2第2項第3号の規定に基づき、標準生命表の作成について金融庁から業務を委託されています。
標準生命表の改定案につきましては、2017年3月31日に公表し意見募集を行った後、5月10日に理事会決議し、5月11日に金融庁長官に提出しました。
このたび、金融庁による告示改正を経て、「標準生命表2018」が2018年4月から適用されることとなりましたので、別紙のとおり標準生命表2018に関する資料を公開いたします。
標準生命表には様々な数値が定められていますが、その一つに予定死亡率があります。
予定死亡率が変わることで、死亡リスクや医療リスクが変わってきます。
具体的に、保険料改定につながる理由を次で説明していきます。
標準生命表と保険料の関係
標準生命表の改定は、医療技術の進歩で寿命が長くなったことや、若年層の死亡率が下がったことが反映されています。
死亡する割合が下がったことで、死亡保険にかかる保険料は引き下げられることになりました。
一方で、長寿化から医療にかかるリスクは高くなったため、医療保険の保険料は引き上げの傾向にあります。
貯蓄を重視した学資保険が受ける影響は大きくありませんが、子どもの保障や育英年金をつける場合は保険料が変わる可能性があります。
学資保険はこれからどうなる?
学資保険や年金保険は2017年の予定利率引き下げから、保険料が大幅に引き上げられた保険会社が多いです。
しかし、依然として運用益を出すのは難しい状況が続いています。
そのため今後も保険料の引き上げ、販売停止が想定されます。

事実、数ある学資保険の中でも返戻率が高く人気のソニー生命の学資保険は一時的に販売を停止していた時期もあります。
ソニー生命の学資保険についてはこちらの記事で詳しく解説をしています。
学資保険は、契約時に支払う保険料の合計金額、受け取れる金額の合計が決まるため、返戻率以上の運用益を出さないと保険会社の利益になりません。
運用益が見込まれない現状では、返戻率が多少下がっても保険料を値上げする保険会社が少なくありません。
いま返戻率が良い学資保険でも、数か月後、1年後もそうとは限りません。
こまめに情報収集をして、加入のタイミングを見極める必要があります。
返戻率については学資保険返戻率ランキングの記事で詳しく解説をしています。
学資保険と値上がりまとめ
ここまで、保険料の構成や動向について確認しました。
学資保険を始め、貯蓄性の高い保険の保険料は全体的に高くなることが予測されます。
また保険料が変わる時期は、年初めの1月や年度替わりの4月と決まっていません。
4月に切り替えの保険会社が多いですが、年度の途中で販売停止になることもあり得ます。
保険会社によっては、出生前加入(赤ちゃんが生まれる140日前から契約)できる場合もあります。
「タイミングを逃して保険料が上がってしまった!」ということがないように、常に最新の情報を確認してください。
学資保険だけでなく、他の保険でも同じことが言えます。
保険を検討する際には頭の片隅にでも置いておくことをおすすめします。

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