学資保険には、保険料を支払っている契約者が死亡したときのために、「保険料払込免除特約」と「育英年金特約」をセットすることが可能です。
契約者が死亡してしまったときに、それ以降の保険料が免除になったり、日々の教育費に使える年金が受け取れたら、どんなに安心でしょう。
お子さんが生まれて希望に溢れている時期には、「パパやママが死亡したときの保障なんている!?」と思いがちですが、人生には何が起きるか分かりません。
長期的に学費を貯めるという性質上、積立て途中の「万一」にも備えておく必要があるのです。
そこで今回は、そのための2つの保障と、知っておきたい注意点について解説していきます。
学資保険で教育費を貯めるとはどのようなことか、またその注意点を理解し、万が一のときにもお子さんの夢を叶えてあげられるようにしておきましょう。
契約者(親)が死亡したら学資保険の保障はどうなるのか

学資保険は、0歳〜6歳程度の年齢を中心に、基本的には親を契約者、生まれた子どもを被保険者として契約する保険。
一般的な銀行預金より貯蓄性が高いため、満期までお金を積み立てることを前提にして加入することがほとんどですが、「保険」である以上、リスクを回避するための保障もついています。
加入できる子どもの年齢は、保険会社によって変わります。
学資保険は被保険者(子供)ではなく、契約者(親)に保障がつく

保険の契約者とは、「保険料を支払っている人」を指し、被保険者が死亡した場合は、契約者の指定する死亡保険金受取人が保険金を受け取ります。
たとえば夫が契約者・妻が被保険者の死亡保険の場合は、保険金は夫が支払い、妻が死亡したら保険金を夫が受け取るわけです。
このように、一般的な保険では死亡保障は「被保険者」についていますが、学資保険ではちょっと違います。
それは、「子ども(被保険者)が亡くなったときではなく、親(契約者)が亡くなったときの保障がセットされている」という点。
また、死亡に限らず高度障害と認定されたときも、保障が適用されます。
高度障害とは、生命はあっても、回復の見込みがない非常に重い障害を負っている状態を指し、保険会社によって認定の要件は変わります。
それは、少し考えたら当たり前ですよね。
まず、生まれたばかりの子どもの死亡をリスクと考え、子どもの死で保険金を受け取りたい親などまずいないということ。
そして長期にわたって学資を貯めることを目的としている以上、保険料を支払う側の「死亡」の方が、リスクとして高いということです。
学資保険の契約時には契約者(親)の状態が診査される

学資保険を契約するときは、親が契約者となり、契約時の年齢や、健康状態を告知する必要があります。
つまり、契約者と被保険者を兼ねるということですね。
これはもちろん、死亡や高度障害になるリスクを、他の保険商品同様に診査されるためです。
診査の結果、学資保険の契約期間中に死亡のリスクが高い場合は、契約者の健康状態によっては加入を断られることもあります。
ただし、健康告知を不要とする商品もあります。
もし契約者の健康状態に不安がある場合は、診査や告知の要らない保険会社で検討をしてみましょう。
契約者が死亡した際の学資保険2つの保障

契約者(親)に対しての保障がついているのが特徴、ということが分かりましたが、学資保険で契約者が死亡した場合、どのような保障を受けられるのでしょうか。
学資保険ならではの2つの保障について、詳しくみていきましょう。
保障その① 保険料払込免除特約
ほとんどの学資保険には、契約者(親)が死亡もしくは高度障害になったときに、保険料の支払いが免除される「保険料払込免除特約」がセットされています。
これは、契約者の死亡によって保険料を納められなくなったら、その後支払いは免除され、満期時には契約時に設定した満期保険金を受け取ることができる、という特約です。
子どもの大学(高校)入学時期を目指して積み立てられる学資保険ですから、途中の支払いがで止まってしまっては、大変なことになりますよね。
ただし一般の死亡保険と違う点があります。
それは、死亡保険金を受け取れるのは契約者死亡時ではなく、あくまで「満期時」であるということ。
契約者が死亡し、家計に負担がのしかかってきたから、とりあえず学資保険のお金をアテにしよう…ということはできません。
保険料払込免除特約は学資保険に無料で自動的にセットされているものですが、保険会社によっては「選択制」を取っているケースもあります。
さらに、契約者の年齢が高い場合は、年齢制限によって払込免除特約が付けられないケースもあります。
これは当然ながら、年齢が高い契約者ほど、死亡や高度障害のリスクが高まるため。
そのため、祖父母を契約者とするときや、子どもの両親の年齢が高めのときは、注意が必要です。
保険料払込免除は、学資保険ならではの、とても優位性の高い特約です。
これを付帯できないとなると、ただの貯金とメリットは変わらなくなってしいます。
保障その② 育英年金(養育年金)特約

学資保険によっては、契約者(親)の死亡時から、満期金を受け取れる年齢までの間に受け取れる「育英年金(養育年金)」の特約がセットできます。
子どもにかかる教育費は、入学金だけではありません。日々の通学、塾や習い事、もちろん生活費も含め、多くの資金を必要とします。
そのため、この特約をセットしておくことで、万が一のときの収入補てんにすることができるのです。
ただし気を付けたいことがあります。
この特約をセットすると、満期金の返戻率は元本割れします。
最終的な返戻率は、多くても80%程度だと思ってください。
この特約はまさに「保険」としての特徴を表していますが、貯蓄第一の場合は、目的がずれてしまうかも知れません。
学資保険の利率の良さに注目して加入するなら、育英年金特約をつけず、万が一のときの生活資金は別の生命保険でしっかり備えておく方がよいケースもあります。
逆に、たとえ元本割れするにしても、万が一のときの生活保障も兼ねた保険が必要という方にとっては、検討してみる価値はありそうです。
学資保険で契約者が死亡したときの手続きと注意点

学資保険では、手続きのできる契約者が死亡したときに備えて、加入時に「ふたつの役割」を指定しておくことになっています。
役割その① 指定代理請求人
学資保険を契約するときには、「指定代理請求人」を決めます。
これは保険契約者が保険料払込免除や、保険金の支払いを請求できないときに、代わりに手続きをする権利をもつ人です。
当然ですが、被険者である子どもは未成年。
契約者である親が亡くなったときに、自分で保険手続きはできませんし、そもそも契約者が死亡したことを保険会社に連絡し、各種手続きの書類をもらわないといけません。
そのため、加入時に指定をしておくのです。
指定代理請求人は、一般的には3親等内の親族とされています。
身内の、信頼できる人を指定しておくことが大切です。
役割その② 後継保険契約者

契約者が死亡しても、学資保険は消滅しません。
なぜなら、保険料払込免除特約によって、満期まで保険は継続するからです。
そのため、保険契約を引き継ぐ人が必要です。
保険を引き継いでいく人のことを「後継保険契約者」と呼び、保険加入時に契約者が決定します。
後継保険契約者は、契約に関する全ての権利と義務を引き継ぐことになります。
指名する相手は誰でもよいわけではなく、被保険者(子ども)や、被保険者の父母、祖父母のうちからひとりを指名します。
契約者が父親のケースであれば、後継保険契約者は母親にする事が多いですね。
学資保険の保険金受取人について

契約者が死亡してしまったら、誰が保険金を受け取るの?という疑問が出てくるかと思います。
契約者が死亡せずに満期を迎えたときは、満期保険金は契約者が受け取ります。
間違えやすいのですが、被保険者である子どもが受け取るわけではありません。
しかし契約者が死亡した場合は、契約時に指定した「後継保険契約者」が、新たに契約者や受取人を決めます。
通常は、後継保険契約者がそのまま新たな契約者・受取人にスライドすることが多いでしょう。
ただし、学資保険は「だれが受け取るか」によって、税金のメリット・デメリットが変化します。
安易な指定は、デメリットだけを生むことになりかねません。
学資保険と税金の仕組み

学資保険における受取人は、契約時に契約者が決めます。
また、契約者本人が受取人となっているケースも多く、この場合は後継保険契約者が引き継いで判断をすればOKです。
問題となるのは、後継保険契約者が指定されていないとき。
そのときは、受取人は自動的に子どもになっています。
そして、そのままにしておくと、税制的に困ったことになってしまうのです。
子どもに所得税がかかってしまうケース

いざ受け取るときに問題が起きるのは、以下のようなケースです。
・学資保険加入後、数年で契約者が死亡した
・保険料を支払った期間が短く、「満期金-支払った保険料の総額が50万円以上」になる
・受取人が子どもの場合、子どもの所得として「一時所得」と計算される
・すると、子どもの所得に対して、所得税がかかってしまう
具体的にシミュレーションしてみましょう。
子どもが0歳のとき、満期金180万円の学資保険に父親を契約者として加入するも、2年後に父親が死亡。それまでに支払った保険料はまだ25万円程度…という場合。
「満期金(200万円)-保険料の総額(25万円)=175万円
この場合、差額は子どもの所得と見なされてしまい、所得税を納めなくてはなりません。
子どもが扶養から外れてしまうケース

さらに、受取人を指定せずに子どもが受取人のまま放置していると、困ったことが起きてしまいます。
子どもの所得が38万円をこえていた場合、所得税が発生するどころか、扶養から外れてしまうことになるのです。
契約者であった父親が死亡し、母親が子育てをしているケースでは、母親の扶養控除から外れてしまうだけではなく、母子家庭で受けられる支援の対象から外れたり、母親の税金の控除額が減らされてしまうこともあります。
これらはレアなケースかも知れませんが、学資保険の契約者が死亡した際の、手続き上の大きな落とし穴でもあります。
そうならないためにも、契約者が死亡した段階で、指定代理請求人がすみやかに保険料払込免除の申請を行うことが大切。
満期金の受取人を母親に定め、子どもが受取人になったままということを避ける必要があるのです。
関連記事⇒学資保険の受け取りに税金はかかる?支払う税金と対策を現役FPが1番分かりやすく解説
学資保険の契約者は誰がなるべき?

ここまで、学資保険の契約者が死亡するというリスクについて見てきましたが、そもそも学資保険は、誰が契約者になるのがベストなのでしょうか。
商品設計上は父母・祖父母のだれでもが契約者になれます。
しかし、家庭の状況によって、ベストな選択をすることが必要です。
学資保険は、収入の多い方が契約者に
父親・母親どちらが契約者になった方がいいかというと、「収入の多い方」です。
契約者が死亡したとき、一番の助けとなるのは「保険料払込免除制度」です。
だからこそ、収入の多い方が保険料を支払っておくことで、万が一のことがあってからの恩恵を受けやすいのです。
祖父母が契約者になる場合の注意点

「孫の誕生のお祝いに」と祖父母が契約者となって学資保険に加入することもあります。
これは、両親からすると祖父母の資金で学資を貯めることができるので、お得と考えられがち。
しかし気を付けたい注意点があります。
手続き上の注意点は?
契約時には、親権者の署名が必要です。
子どもの親権者が、学資保険を必要とし、子どもを被保険者にすることを認めないといけません。
※両親が不在で、祖父母が親権者である場合を除きます。
年齢・健康状態に関する注意点は?
学資保険は、約20年間にわたって保険料の支払いが必要な、長期的な商品です。
そのため契約者には年齢制限があります。
一般的には75歳を上限とした商品が多いため、保険会社に確認が必要です。
また加入時には健康状態に関する告知も必要となり、加入できない可能性も。
年齢・健康状態によって死亡リスクが高いとみなされるため、祖父母が契約者となる契約では、保険料払込免除特約は原則として付帯できません。
お金に関する注意点は?

一般的に、契約者の年齢が上がると、保険料も上がります。
つまり祖父母が契約者になることで、支払う保険料総額が上がるということです。
また祖父母が契約者で、父親が受取人などというように、契約者と受取人が異なる場合は、保険金を受け取るときに贈与税がかかってしまいます。
受け取る金額が年110円を超してしまったら、贈与税を支払わなくてはなりません。
このように、祖父母が契約者となる場合は、デメリットが増えてしまいます。
学資保険は、貯蓄性はもちろんのこと、契約者が死亡したときの保障が大きなメリット。
そのためにも、一家の家計を支える立場の人が契約者となることで、最大限にリスクヘッジができるといえるでしょう。
まとめ

銀行の預金よりも高金利で、計画的に学資を貯めることができる学資保険。
ただの貯金とは違い、契約者が死亡したときの保障があるというのは、さすが保険商品です。
家族の死はあってはならないことですが、子どもの未来を考えたとき、学資保険のメリットとデメリットを理解して有効に活用できるようにしておきたいですね。

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