生命保険には「契約者貸付制度」というものがあり、保険会社からお金を借りることができます。
一般的なカードローンやキャッシングよりも低金利、かつ返済の自由度も高いので使い勝手がいいのですが、なぜかあまり知られていません。
この制度を使うと、長年維持してきた保険契約を解約せずに、ある程度まとまったお金を借りることができます。
また一時的に保険料の支払いに困ったときにも、緊急的に利用が可能です。
「本当に困った…」というときの最終手段になるなんて、さすが保険ですね!
しかしそうはいっても、契約者貸付制度はあくまで借金。制度の利用にはメリットとデメリットがあります。
利息のこと、利用方法、返済についてなどをあらかじめ知り、適切に利用するようにしてください。
本日は、その契約者貸付制度について、徹底的に解説していきます。
学資保険における契約者貸付制度とは

契約者貸付制度とは、加入している保険契約に貯まっている解約返戻金の一部を、保険会社から前借できる制度のことです。
たとえば60歳満期時に200万円の解約返戻金を受け取れる契約の場合、本来は60歳にならないと戻ってこない解約返戻金のうちから、50万円を先に借り入れできる…などということができるのです。
契約者貸付制度はあくまで借金である

自分が積み立てたのだから、自分のお金!と思いがちですが、満期保険金として支払われるまでは、それは保険会社のお金。
一部を借り入れするということは、保険会社から借金をするということになります。
保険商品とは、あくまで契約上の満期時まで使わない条件で、契約時に定められたメリットを最大限に受け取れるものです。
一部を切り崩すということは、条件が少し変わるということを知ったうえで、適切に利用しましょう。
契約者貸付制度の利息について
借金ということは、当然、利息が発生します。
これは、いくら借り入れをするかによって変わります。
貸付金に対する利息は、借入日から発生し、万が一利息がきちんと返済されないことがあると、利子は元金に合算され、その金額に対して利息が発生してしまいます。
また、利息の利率は、契約者貸付制度を利用した日付ではなく、「その保険契約における契約日」であらかじめ決まっています。
保険契約をする前に、解約返戻金のシミュレーションなどが記載された提案書を渡されませんでしたか?
「ご契約内容の確認」などの書類には、「この保険契約で、契約者貸付制度を利用する場合の利率は〇%」と明記があるはずです。
もちろん、窓口や担当者に問い合わせることで、「どれくらいの利率で借り入れができるのか」を聞くことも可能です。
契約者貸付制度はどうやって使うのか

契約者貸付制度は、すべての保険契約で利用できるわけではありません。
養老保険、終身保険や学資保険などの、満期金・解約返戻金が一定のペースで貯まっていく仕組みの保険に限られます。
当然ながら、掛け捨ての保険や、加入して間もなく、まだ解約返戻金がたまっていない保険では利用はできません。
最近では保険料が割安な代わりに「無解約返戻金型」という仕組みで販売されている保険商品もあります。
自分の契約が、制度利用に該当しているかは、あらかじめ知っておく方がよいでしょう。
また、解約返戻金のある商品であっても、加入プランによっては契約者貸付制度を利用できないこともあります。
「使える」と思い込んでいた…ということがないように、詳しくは保険会社に問い合わせをしておきましょう。
契約者貸付制度を利用するメリット

契約者貸付制度のメリットをみていきましょう。借金といえども、自分の保険料から積み立てたお金です。
必要なときの利用は、権利でもあります。
ほかのローンと比較したとき、金利が低い
まとまったお金が必要になったとき、選択肢にあがるのはカードローンかと思います。
しかし、金利が高いのがネックになることでしょう。
保険の契約者貸付制度は、カードローンと比較して利率が低いことがメリットとしてあげられます。
契約内容によりますが、中にはカードローンの2割程度の金利で借り入れができることもあるため、返済計画も無理なく立てることが可能です。
契約者貸付制度の返済は自分で自由にコントロールできる

一般的な借金(カードローンなど)は、「毎月〇日に返済」「毎月いくら返済」など、あらかじめ決めた返済計画に沿って返していかなくてはなりません。
そして、決まった日の返済が難しければ、他の方法でお金をつくらなくてはならない…などのデメリットも生まれます。
しかし契約者貸付制度は、借入総額が解約返戻金以下であれば、返済の方法や時期は基本的に自由です。
お金ができたときに、一括でも分割でも返済が可能なのです。
ただし、返済に関しては契約状況によってケースバイケース。
返済金額も「いくら以上から」と定められていることもあるので、諸条件については、各保険会社に問い合わせをしてみましょう。
保険料の支払いができないときにも契約者貸付制度は使える
あまり知られていませんが、保険料の支払いに充填することも可能です。
収入が減ったなどの理由で保険料を滞納すると、数カ月でその契約は「失効」してしまい、契約は消滅してしまいます。
それを避けるために、契約者貸付制度を利用することが可能です。
また保険契約によっては「自動振替貸付制度」がついている場合もあります。
これは、保険料の引き落としができなかったとき、解約返戻金の範囲内で自動的に保険料が立て替えられていく仕組みです。
自分では理解していなくても、一時的に契約者貸付制度を使っていることになります。
困ったときに、納得して利用できるように、制度について理解しておくことが大切です。
契約者貸付制度を利用すれば学資保険を解約しなくて済む

一番のメリットは、お金のために保険を解約しなくても済む、ということでしょう。
保険会社には、契約者貸付制度のことを知らない方から、「急にお金が必要だから、解約をして、すぐに解約金を振り込んで!」という依頼が来ることがあります。
解約はもちろん契約者の自由ですが、今まで継続してきた保険契約を無にしてしまうのは、本当にもったいないことです。
たとえば、「家族が病気で大きなお金が要る」「災害にあってしまい、まとまった資金が要る」など、人生トラブルに巻き込まれている場合。
保険を解約してしまうと、そのあとの保障もなくなってしまうことになりますから、ますますリスクは増えてしまいます。
もし、生活が不安定な状況で、自分も病気になったり死亡してしまったら…と考えると、保険はキープしておく方がよいに決まっています。
また一度解約した保険には、同条件では入り直しはできません。
年齢も健康状態も変わっていますから、再診査でひっかかり、無保険の人生を送る可能性も出てきます。
さらに、途中解約では、今まで支払った保険料の総額より少ない金額しか戻らないケースがほとんど。
そう考えると、「保険契約をキープできる」ということは、契約者貸付制度の最大のメリットということが分かります。
契約者貸付制度を利用するデメリット

契約者貸付制度には、デメリットもあります。
お祝い金・保険金が契約者貸付制度で借りたお金の返済に充てられてしまう
契約者貸付制度でお金を借り入れている状態で、お祝い金や保険金の支払いがある場合、その保険金から借りた金額と利息が差し引かれて払われることになります。
たとえば病気になって保険金を請求したとき、返済に充てられた金額が大きいと、あてにしていた治療費が入ってこない可能性がある、ということですね。
保険商品はあくまで「大きな病気やケガ」「将来の学資」に備えておくもの。手軽だからといって契約者貸付制度をこまめに利用していると、いざというときに困ってしまうかも知れません。
使いすぎると、保険解約を解除される可能性がある

借りたお金を返さずに放置していると、利息がかさんでいき、解約返戻金に対する貸し出しの限度額を超えてしまう可能性があります。
そのまま放置すると、保険契約が失効もしくは解除になってしまうこともあるので、注意が必要です。
そのようなときには、必ず保険会社から通知書が届きます。
指定の期限までに、保険をキープできるだけの返済をするようにしましょう。
契約者貸付を利用する流れ

契約者貸付制度の利用は、意外と簡単です。利用方法もたくさんあり、自分にとって都合の良い方法を選ぶことができます。
ただし、どのような方法があるかは保険会社によって異なります。
不明点があれば、各保険会社の公式サイトを確認してみましょう。
必ず「契約者貸付の利用方法」などの記載があります。
担当者もしくはコールセンターへ
一番スムーズでカンタンなのが、この方法です。担当者もしくはコールセンターに、契約者貸付を利用したいことと金額を伝え、必要書類を用意してもらいます。
書類を記入したあとは、郵送もしくは担当者・窓口へ提出することで、手続きは完了します。
保険会社の店頭窓口へ行く

馴染みの担当者がいない、また電話ではなく、対面でいろいろ聞きながら手続きがしたいという場合は、保険会社の窓口へ行くこともおすすめです。
注意点としては、もしその場で申し込みをするとなったら、本人確認書類や印鑑などが必要になる可能性があるということです。
念のため持参するか、あらかじめ電話などで問い合わせをしておくとスムーズです。
保険会社の公式ホームページから申請する

保険会社によりますが、契約者貸付制度の利用を公式ホームページから申し込めることがあります。
この場合は、契約者であることを証明する、IDやパスワードを入力する必要があります。
近ごろの保険解約はネット上での手続きが主流になっているため、各会社、契約者に「ネット手続きを利用するためのID・パスワード発行」を促していることが多くあります。
いざ契約者貸付制度を使おう!となったとき、その手続きが済んでいなければ、ID発行手続きから開始しなくてはなりません。
保険は金融商品ですから、ID発行には数日かかることもあります。
面倒と思わずに、いつでも公式ホームページへログインできるようにしておくことが大切です。
電話による自動取引をする
保険会社によっては、電話による契約者貸付制度の利用が可能です。
専用の電話番号をもっている会社もあり、登録口座にすぐにお金が振り込まれるため、とても便利です。
ただし本人確認のため、IDやパスワード、契約番号などの入力を求められます。これもあらかじめ手元で確認できるようにしておきましょう。
ATMを利用する

保険会社にあらかじめ発行してもらうカードで、コンビニや銀行のATMから直接引き出せることもあります。
ただし最近ではカードの制度を持たない会社も増えています。
このように、契約者貸付制度の利用方法はさまざまですが、ピンチのときには、すぐにでも振り込んで欲しいですよね。
着金にかかる日数なども、手続き方法によって変わるため、契約している保険会社に確認を取るようにしましょう。
災害時における契約者貸付制度の利用について

保険会社は金融機関ではありますが、お金を貸すことが本業ではありません。そのため契約者貸付制度も、一定の範囲内での利用にとどまります。
しかし、自然災害などで災害救助法が適用された場合、保険会社によっては指定地域の被災者に対し、契約者貸付金の支払いを迅速化する特別措置をとるケースがあります。
保険は困ったときに使うものです。災害で家を失った、家族のためにまとまったお金が必要…などの、緊急的な必要性があるときは、そのお金に助けられるはず。
条件に合致するなら、利用を検討することもおすすめです。
学資保険と契約者貸付制度まとめ

契約者貸付制度には注意点もありますが、計画的に利用すれば一般的なカードローンよりもメリットが大きいといえます。
急なお金が必要になったときはパニックになって、焦った対応をしてしまいがちですが、キャッシングや保険の解約をするまえに、契約者貸付制度を利用して、一時的な困難を乗り切るようにしてみてください。
きっと、「保険に加入しておいて、よかった」と、安心できることでしょう。

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