こどもの学費の準備というと学資保険というイメージが強いですが、ジュニアNISAを選ぶ方も増えています。
理由は学資保険の返戻率の低下です。
以前は返戻率が130%近い学資保険も多かったのですが、マイナス金利導入後はよくて110%に留まっています。
さらに、商品によっては返戻率が100%を下回る場合もあり、学資保険でお金を増やすことは難しくなっています。
そこで子どもの教育費の準備にジュニアNISAが選ばれるようになりました。
「NISAってよく聞くけれど何かわからない」
「なんでジュニアNISAが学資保険の代わりになるの?」
など思う方も多いと思います。
この記事では、以下の3点をわかりやすく解説していきます。
- NISAとジュニアNISAの違い
- ジュニアNISAの開始から活用まで
- 学資保険とジュニアNISAの違い
子どもの教育資金を効率よく準備したいと考えている方、この機会にジュニアNISAを検討してみてはいかがでしょうか。
ジュニアNISAってなに?仕組みとスタートするまでのこと

ジュニアNISAは子ども名義で口座を作り、そこで運用して得た利益は一定金額まで所得税が非課税になるという仕組みです。
非課税枠はNISAよりもジュニアNISAの方が多く、教育資金を確保するための新しい手段として人気が高まっています。
NISAって何?
NISAは2014年1月にスタートした制度です。
具体的には、株や投資信託で得た運用益や配当金が一定額非課税になる制度です。
NISAは「Nippon Individual Savings Account」の略語で「少額投資非課税制度」が正式名称です。
参考になったのはイギリスのISA(個人貯蓄口座)という制度で、日本版ISAとして頭にNがついてNISAとなりました。
NISAとジュニアNISAは何が違うの?
ジュニアNISAはNISA開始から2年後の2016年に開始され、20歳未満が対象の制度になりました。
NISAは20歳以上が対象の制度のため、ジュニアNISAのもっとも大きな違いは「年齢」と言えるでしょう。
ただ、20歳未満のこどもが株などの運用はできないので、親権者が運用を管理します。
引用:ジュニアNISAの概要
他にも、非課税の限度額がNISAとジュニアNISAでは異なります。
NISAは年間120万円が非課税投資枠ですが、ジュニアNISAは80万円になります。
詳細は後半で触れていきます。
ジュニアNISAができた理由
ジュニアNISAが開始された背景には3つの大きな狙いがあります。
- 若年投資家を増やし株式市場を活性化させる
- 祖父母から子への資金移動で金融資産の偏りを少なくする
- 長期間での資産形成を援助する
若年投資家を増やし株式市場を活性化させる
2014年のNISA開始後、証券会社に口座を開設する方が増え、大きなお金の流れが生じました。
しかし、投資家のほとんどが高齢者と言われており、若い投資家を増やさなければ株式市場の活性化は望めません。
そのため、ジュニアNISAで親世代の投資家を増やしていこうという狙いがあります。
祖父母から子への資金移動で金融資産の偏りを少なくする
日本国内の金融資産は高齢者が保有する割合が高くなっています。
高齢者の金融資産を若年層に移す手段の一つに相続や贈与が挙げられますが、なかなか数は伸びていません。
そこで、こどもの教育費を祖父母世代もお金を出すケースが増えている点を踏まえ、ジュニアNISAを方法の一つとして進めています。
長期間での資産形成を援助する
こどもの教育資金は10年~20年かけて形成されるため、長期スパンで見た資産形成の手段が必要になります。

ジュニアNISAは、長期投資を前提とした制度なので教育資金の準備にぴったりです。
FPが解説するジュニアNISAの5つの特徴
ジュニアNISAがスタートするまでの流れを確認したところで、ここからはジュニアNISAの内容を見ていきましょう。
こどもだけが利用できる制度
日本国内に在住している0歳から19歳の未成年が利用できます。
20歳以上はNISAの対象となるので、ジュニアNISAは未成年に限定されています。
そのため、こどものための制度と言えるでしょう。
運用を管理するのは親権者
赤ちゃんがお金を運用することは、もちろんできません。
口座運用管理は原則として親権者が行います。
こども名義の口座を親権者が管理するのがジュニアNISAの特徴です。
18歳まで口座からお金を引き出せない
原則としてこどもが18歳の1月1日を迎えるまで口座からお金を引き出せません。
口座を廃止して引き出すことは可能ですが、その場合は非課税だった運用益や配当金全てに課税されます。
ただし、災害などが原因で引き出す場合は、18歳未満でもあっても課税されない場合があります。
金融庁が公開しているジュニアNISAの使い方では下記のように記されています。
ジュニアNISAには18歳まで払出し制限があります。この払出し制限が18歳で解除されることとなっているのは、一般的に、子どもが進学・就職等を迎える時期を想定しているためです。
払出し制限解除後のジュニアNISA口座内の資金の使い道については、口座の保有者である子どものために用いられるのであれば、制限はありませんが、例えば、子どもの進学や就職といった人生の新たな節目を迎えるに当たって必要となる資金を、子どもが小さいうちから長い目で形成するといった使い方が考えられます。
詳細は口座開設時に確認しましょう。
非課税期間は最長5年
ジュニアNISAの口座で購入した上場株式や投資信託で得た配当金、分配金、譲渡金は5年まで非課税になります。
しかし、途中で売却しても非課税枠の再利用はできないので注意が必要です。
年間非課税金額の上限は80万円
ジュニアNISAを使える上限金額は年間80万円です。
1年間での投資金額が80万円以下であっても、翌年への繰り越しはできません。
計画性を持って非課税金額を活用することをおすすめします。
ジュニアNISAを始める方法
ジュニアNISAを始める際は、証券会社で口座を開設する必要があります。
一度口座開設をするとジュニアNISAの場合は金融機関の変更ができません。
そのため、どの証券会社で口座を開設するか慎重に考えなければなりません。
証券会社には2種類ある
証券会社は大きく「総合証券」と「ネット証券」の2つに分けられます。
総合証券は、野村證券や大和証券など、対面がメインの証券会社です。
どの銘柄がおすすめかなどを担当の証券マンに相談できる点が特徴です。
プロに相談しながら投資できるのが魅力的ですが、取引手数料が高い点がデメリットです。
ネット証券には、楽天証券やSBI証券、松井証券などがあります。
対面でないため、手数料が安く設定されており、多くのネット証券は口座管理料もかかりません。
ネット=サポートが手薄という印象があるかもしれませんが、電話やメールのサポートが充実しているネット証券会社が多いです。
自分に合った証券会社をまず見つけることがジュニアNISAスタートの第一歩と言えます。
証券会社を決めてからすること
まず、口座開設に必要な書類を各証券会社に取り寄せます。
必要書類を記入の上、マイナンバーカード(もしくは通知カード)とともに返送します。
親権者とこども両方のマイナンバーが必要になるので準備しておきましょう。
こどものマイナンバー通知カードは出生届を提出後2週間程度で自宅に郵送されます。
通知カードが手元に届いてからの手続きになるのを覚えておきましょう。
書類を証券会社に提出した後、証券会社が税務署に申請をします。
確認が終了したら口座開設完了の連絡が証券会社から入り、いよいよジュニアNISAスタートです。
ジュニアNISAの銀行口座開設までの注意点
親権者が単身赴任等で別居している場合や、離婚等で親権者が一人の場合、通常よりも必要書類が多い証券会社があります。
戸籍謄本が必要な場合もあるので、口座開設前に必要な書類を確認することをおすすめします。
また、ジュニアNISAの口座開設はマイナンバーの提出が必須です。
書類に不備があると時間がかかるので、漏れがないようチェックしましょう。
ジュニアNISAと学資保険を現役FPが徹底比較!
教育資金の準備として定着している学資保険と、新しい教育資金の準備方法のジュニアNISA。
どちらも金融機関を通じて行う点では変わりませんが、保険会社にお金を預けるのと証券会社に口座を作って投資するのとでは大きな差があります。
ここからは、学資保険とジュニアNISAをそれぞれの項目で比較していきます。
それぞれのメリット・デメリットを踏まえた上で、どちらを活用するかの参考にしてください。
契約者について
学資保険の場合、保険会社によっては父母以外に祖父母も契約できる場合があります。
しかし、契約者の範囲を満たした場合であっても、年齢と健康状態をクリアしなければ契約者できません。
保険会社によって要件は様々なので、自分の希望を満たす保険会社を見つけることで問題は解決します。
一方で、ジュニアNISAはどの証券会社でも原則として親権者でないと口座の開設はできません。
親権者=父母なので、おじいちゃんやおばあちゃんがジュニアNISAを運用していくことはできません。
お金を出してもらうことは可能ですが、運用管理は父母が行う必要があります。

開始できる時期とタイミング
学資保険の中には出生前加入ができる保険会社もあります。
出生前加入は予定日の140日前から契約できる制度です。
ジュニアNISAの場合は、赤ちゃんが生まれてから出生届を提出し、マイナンバーの通知カードが届いてからでないと口座開設できません。
学資保険は生まれる前でも手続きできますが、ジュニアNISAは生まれてからしばらくは手続きができないので要注意です。

元本割れするかどうか
学資保険の場合は契約時に、受け取ることのできる金額が確定しています。
返戻率が100%を切る商品もありますが、たいていの学資保険は返戻率が100%を上回ります。
マイナス金利の影響により以前より返戻率は下がりましたが、ソニー生命の学資保険や明治安田生命の学資保険では110%近い返戻率をキープしています。
つまり、元本割れをしない商品を選べば元本割れすることはありません。
ジュニアNISAの場合は、運用するので元本割れのリスクが伴います。

もちろん、安定性の高い商品に投資することでリスクを下げることは可能ですが、ゼロになるわけではありません。
学資保険よりも大きく資産を増やすこともできますが、資産が減るリスクもあるのがジュニアNISAのデメリットとも言えます。
学資保険の返戻率については学資保険の返戻率ランキングで解説しています。
お金を増やすことができるかどうか
学資保険は契約時に決められた範囲でしかお金は増えません。
契約後の経済状況が反映されない点は、メリットともデメリットとも取れます。
しかし、ジュニアNISAの場合は対象的で、その時点の経済状況に応じたリターンを得ることが可能です。
現状ではお金を簡単に増やすことは難しいですが、仮に数年後インフレが始まったらジュニアNISAの方が大きなリターンを得られる可能性があります。
中途解約がしづらい
学資保険、ジュニアNISAともに途中で解約すると不利益が生じます。
学資保険の場合は、解約時期に応じた解約金が決められています。
契約前の資料に記載があることもありますが、ほとんどの時期で支払った金額の合計よりも少なくなります。
ジュニアNISAの場合は、解約すると非課税期間にさかのぼって課税がされます。
せっかくの利益も課税対象になってしまうので、途中での解約はしない方がいいでしょう。
学資保険がおすすめの人、ジュニアNISAがおすすめの人
それぞれのメリットとデメリットを紹介したので、どんな人におすすめなのかをまとめていきます。
ただ大前提として、学資保険とジュニアNISAにきっぱりと優劣をつけることはできません。
お父さんお母さんの考え方次第では、どちらも良い資産形成方法になります。
そのことを踏まえた上で、おすすめの人をお伝えしていきます。
学資保険がおすすめの人
前の項目を踏まえた上で学資保険がおすすめするのは以下のようなタイプです。
- 株や投資信託での資産形成に抵抗がある人
- 確実にお金を増やしたい人
- 18歳までの間でお祝い金を受け取りたい人
ジュニアNISAの場合、投資することでお金を増やしていくため、投資に抵抗がある人にはおすすめできません。
「お金を増やしたいけれど投資はちょっと…」という方には、学資保険がおすすめです。
学資保険は途中で解約をしなければ元本割れをすることもないので、こつこつと増やしたい方は学資保険の方が向いていると言えるでしょう。
また、ジュニアNISAは18歳までお金を引き出すことができませんが、学資保険は小学校や中学校、高校入学のタイミングでお祝い金が受け取れるものもあります。
18年間預けっぱなしなのが不安な方は、途中でお祝い金のある学資保険の方がいいかもしれません。
ジュニアNISAがおすすめの人
以下のような方にはジュニアNISAがおすすめです。
- 多少のリスクがあってもお金を増やしたい人
- 投資に興味がある、もしくは投資をしている人
- 学資保険に加入できない人
何度も説明しましたが、ジュニアNISAは投資の一種です。
投資先を選んでリスクを下げることはできても、ゼロにすることはできません。
学資保険よりもお金を増やしたい方にはジュニアNISAの方がおすすめと言えます。
投資に興味がある方や既に投資をしている方にとっては、非課税枠を使って教育資金を形成できる点がメリットと言えます。
長期スパンで投資をしたい方には、ぜひ検討してほしいです。
学資保険は生命保険の一種なので、健康状態や年齢によっては加入できない場合があります。
また、こどもの年齢が6歳以上の場合、加入できる保険会社は非常に限られてきます。
一方で、ジュニアNISAは年齢や健康状態に左右されません。
親権者であれば始めることができるので、学資保険が難しい方も始めることができます。
学資保険とジュニアNISAの比較まとめ
ジュニアNISAと学資保険についてお伝えしてきました。
どちらも金融商品の一つなので、始める際は念入りに情報収集をする必要があります。
その上で、より自分に合った形で教育資金を準備できたらベストと言えます。
学資保険とジュニアNISAどちらも併用するという手も一行しても良いかもしれません。
いずれにせよ、メリットとデメリットをしっかり押さえてお金を増やしていくことが重要です。
この記事が教育資金をどうやって準備するかの参考になれば幸いです。

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