育英年金とは~FPが教える必要性と相続税や受取人について徹底解説

学資保険にセットできる育英年金とは、契約者が死亡もしくは高度障害状態になったとき、満期まで毎年、年金形式で給付金が受け取れる仕組みのことです。

これだけ聞くと「いいかも」と感じませんか?

しかし育英年金には、「返戻率が大きく下がる」「受け取り時に税金がかかる可能性がある」というデメリットがあるため、安易に付けてしまうのはおすすめできません。

万が一のことがあったら大きなお金が受け取れるということは、そのための「保険料」を支払うということ。
だから育英年金の付いた契約では、返戻率が100%を下回ってしまうのです。

さらに、年金の受取人を子どもにしてしまうと、子どもが扶養から外れてしまう可能性も…。

「知らなかった!」では済まない育英年金。検討をするときは、受け取り時のデメリットが大きいことを認識し、安易に契約しないようにしましょう。

育英年金の仕組み

育英年金とは、保険契約者(親)が死亡してしまった・高度障害状態になってしまったというときに、年金形式で受け取れる学資のことです。

これは学資保険の満期まで支給されるため、一家の収入を支える契約者が死亡してしまっても、大学入学時までは学資に充てられるお金が確保できるため、「万が一の備え」という保険本来の考え方に沿った制度であるといえます。

育英年金は、すべての学資保険についているわけではありません。仕組みは商品やプランによってさまざまで、付けるかどうかを契約時に判断しなくてはいけません。

だからこそ、学資保険を選ぶときには、ほとんどの方が「育英年金って結局必要なの?セットした方がいいの?」と迷うことになってしまうのです。育英年金には当然メリットとデメリットがあります。まずはそれを眺めてから、「どうしようか」決めてみてください。

育英年金のメリット

育英年金のメリットは、とにかく「契約者が死亡して、家計が苦しくなったとき」にフォーカスされます。

保険契約者が死亡すると、年金形式で毎年受け取れる


保険契約者(保険料を支払っている人)が死亡した、もしくは高度障害になってしまった場合、学資保険が満期になるまでの期間、所定額の年金が支給されます。そのため、家計にダメージを受けてしまっても、ある程度子どもの教育費を確保することができるのは大きなメリットです。

保険料の支払いは免除される

契約者が死亡してしまった場合、満期までの保険料は免除となります。

家計を支える人がいなくなってしまった場合、学資保険の保険料支払いが困難になってしまう可能性が高くなります。すると、保険料を滞納して保険契約が解除されてしまったり、解約せざるを得なくなるかも知れません。

それではますます教育費の不安が増してしまいますから、契約者の死亡時には保険料が免除され、学資保険を継続できるようになっているのです。

満期保険金やお祝い金は、予定通り受け取れる


育英年金を受給しても、満期保険金や、小中高校の入学前に受け取るお祝い金などは、予定通りに受け取ることができます。そのため、育英年金は日々の生活や教育費に、そして満期金やお祝い金は進学のための学資に、という区分けで、考えることが可能です。

育英年金がある学資保険は、返戻率が低くなる

育英年金がついた学資保険は「保障型」といわれています。保障と聞くと、よいものに思えますが、その保障部分に保険料が充当されてしまうため、「返戻率が下がる」という大きなデメリットがあるのです。

返戻率が大幅に下がる

「保障型」の学資保険は、保障の付かない「貯蓄型」のものに比べ、返戻率が100%を切ることがほとんどです。返戻率とは、加入から満期までに払い込んだ保険料の総額と、手元に戻ってくる解約返戻金の総額の差額の率のことです。

つまり保障型の学資保険では、支払った金額よりも手元に戻る金額の方が少ない、ということになってしまいます。ではその保険料がどこに使われているかというと、育英年金や死亡保障などの、「保険」の部分に充てられています。

保険とは、皆がお金を出し合って、困っている人に大きなお金を渡すというシステムがそもそもの始まりです。そのため、育英年金を使わずに済んだ人の保険料の一部分が、契約者が死亡してしまった家庭のために使われる…というイメージをもってもらうと分かりやすいかも知れません。

そのため、もし自分が使うことになったら…というリスクヘッジと考えるなら納得できるかも知れません。
しかし、「とにかく少しでも高い返戻率で貯めたい!」という方にとっては、デメリットと捉えられるでしょう。

契約者と受取人はこう決める


育英年金の契約者は、両親のどちらかがなることがほとんどです。

それは、父親でも母親でもいいのですが、育英年金をセットした商品に加入するなら、「収入が多く、いなくなったときにダメージが大きい」方にしておかないと、育英年金の意味がなくなってしまいます。

そのような観点から契約者を父親にした場合は、育英年金の受取人は、母親もしくは子ども本人ということになるでしょう。では、母親と子どもではどちらにしておくのがいいかというと、母親をおすすめします。

その理由は、税金や健康保険に関わってきます。もし子どもを受取人にしてしまうと、子どもが扶養家族から外れてしまう可能性が出てきてしまい、控除や自治体の手当などを使えなくなってしまう可能性があるからです。

扶養家族から外れるとどうなるか

育英年金は、収入と見なされます。つまり子どもを育英年金の受け取り人にしてしまうと、子どもに収入が発生するということになり、それが年間103万円以上あると、税制上の扶養家族から外れてしまうのです。

また、その金額が130万円以上だと、さらに健康保険の扶養からも外れてしまい、子どもが自分で健康保険料を納めなくてはならなくなります。育英年金の額がそこまで満たないとしても、子どもが高校生になりアルバイトなどを始めてしまうと、あっという間に100万円以上の金額に達してしまうでしょう。

家計を助けるための育英年金やアルバイトが、税金を高くしてしまうのは本末転倒。育英年金の受取人を安易に子どもにしてしまうのは、少し危険です。

所得税も発生する


育英年金を子どもが受け取ってしまうと、所得税・住民税も発生してしまいます。年金は所得と見なされるからです。

所得税は、育英年金と所得の合計が38万円を超えると発生します。育英年金が38万円を下回るということはあまりないと思われますので、子どもを受取人にすることで、多くのケースで所得税・住民税を支払わなくてはならなくなる可能性が高いのです。

受取人変更をするべき

契約時に何も分かっておらず、育英年金の受取人を子どもにしてしまった、というケースもあるでしょう。

通常の学資保険であれば、契約者が死亡して手続きをする段階で、「指定代理請求人(契約者に変わって手続きができる人)」が、保険料の払込免除などの手続きを行うことになります。

そのとき、年金の受取人を変更することも可能です。ただし条件もあるため、この記事を読んで不安になった方は、契約者が健在であっても受取人を子どもから親に変更しておくことをおすすめします。

また最近は保険契約も厳しくなっているためレアケースですが、昔、書類・捺印だけで保険に加入できた時期の契約には、「受取人不在」のまま契約がされていることもあります。

もし古くから加入している学資保険があれば、受取人が誰になっているか再確認してみましょう。万が一空欄になっている場合は、すぐにでも受取人を決め、手続きをしておくことをおすすめします。

相続税に注意

育英年金は、受け取りをするときに相続税が発生します。育英年金の相続課税は、育英年金の「年金受給権」に対して課されます。これは、亡くなった人が受け取るはずだったお金の権利を相続した、と見なされるからです。

年金受給権を相続したときの評価額は、「相続税法第24条」の規程に基づき、保険の解約返戻金相当額などによって決められます。また、この相続税は、学資保険の育英年金だけではなく、個人年金保険などを亡くなった人から贈与された場合などにも適用されます。

この年金受給権の金額については、算出方法はとても複雑です。また基礎控除の額と照らし合わせて計算しなくてはならないため、安易な計算では間違ってしまう可能性もあります。

相続税と聞くと「怖い」とイメージしてしまうかも知れませんが、実際には非課税枠などもあるため、育英年金のほとんどを取られる…というようなことはまれでしょう。計算が必要なときには、税務署やファイナンシャルプランナーなど、専門家に相談してみましょう。

育英年金の考え方


育英年金を考えるときは、契約者のほかの保険とのバランスを見る必要があります。そのときは、どれくらいの大きさの死亡保障がある保険に加入しているかがポイントとなります。定期保険や終身保険に加入していた場合、その死亡保険金は、年金のように分割で受け取ることも可能です。

そうなると、ほかの保険でしっかりと死亡保険金が準備されているなら、わざわざ育英年金を付けなくてもいいケースがほとんどなのです。

昔は「父親が一家の大黒柱、母親は家庭を守る」というスタイルが一般的でした。そのため、保障型の学資保険にもその考え方が根強く残っています。

しかし近ごろは、両親のどちらかが死亡しても、片方がしっかり家計を支えられるという二馬力の家庭も増えています。また家計に対する考え方も、昔より多様化しているため、育英年金が自身の家庭に必要かどうかは、ライフプランと照らし合わせながら考えてみる必要があるでしょう。

まとめ

単純に損得で考えるなら、育英年金は「損」になります。しかしそもそも、保険という商品で学資という未来への備えをするのであれば、その先の「万が一」のことも考えておくことは、悪いことではありません。

なんにせよ、よく分からないまま加入したり、後から「知っておけば良かった!」ということがあっても、同条件で入り直せないのが保険です。特に、税金に関することはとても複雑なので、受け取り時に困らないように「どのような仕組みなのか」だけは知っておくことをおすすめします。

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