保険料払込免除制度とは?仕組みと免除になる条件や流れをFPが解説

必要か、不要かという議論をされることの多い「保険料払込免除特約」。

保険とは基本的に、元気なときに加入するもの。

だから「自分が保険料を支払えなくなるような病気にかかる可能性はあるのか?」などと、先のことをイメージしにくく、ついつい保険料をケチって付帯を迷っている方も多いでしょう。

しかし保険料払込免除特約は、途中で追加することも、途中で外すこともできません。そのため契約時にしっかり考えておく必要があります。

また、実際に保険料が免除になるというメリットを受け取るには、そこそこ厳しい条件をクリアしなくてはいけません。

単に「ガンになった」「心筋梗塞になった」ということではなく、その結果の身体の状態が問われます。

そのため、とっても大切なリスクヘッジの特約であるにもかかわらず、実際に救われる人は少ない、という現状も知っておくべきです。

そこでまずは、特約の仕組みと保険料免除の条件を知り、自分の保険に本当に必要なのかを考えてみましょう。

保険料払込免除特約とは

保険料払込免除特約とは、保険会社の定める「所定の状態」になったときに、それ以降の保険料を支払わなくても保険を継続できる特約です。

免除の条件は保険会社によって異なりますが、以下のような条件が主になります。

・三大疾病(悪性新生物、急性心筋梗塞、脳卒中)のいずれかに罹患したとき
・所定の身体障がい状態になったとき
・所定の要介護状態になったとき
・所定の病気やケガにより、就労不能状態となったとき

つまり、「大きな病気になった、もしくは回復の見込みが少なく仕事ができない状態になった」ときに、保険料を免除してもらえる特約ということです。

保険料払込免除特約は、保険料にかける保険

保険商品には、生命保険と医療保険があります。

・生命保険…文字通り、被保険者が死亡することで保険金が支払われる、命にかかっている保険
・医療保険・・・被保険者が病気やケガに見舞われたときに保険金が支払われる保険

死亡してしまった場合は、保険金を受け取ることによってその保険自体が消滅します。

しかし死亡ではなく病気・ケガの場合は、該当する条件の保険金を受け取った後も、保険自体がなくなるわけではありません。

たとえば「死亡時に2000万円、ガンで500万円、入院・手術で日額1万円」という保険に加入していたとしましょう。

この場合ガンになって500万円受け取った後も、保険を継続していれば、死亡時・入院時にまた保険金を受け取ることができるということ。

しかしガンの治療で仕事を辞めてしまい、今まで通りの保険料の支払いが難しくなり、保険を解約せざる得ないこともあります。

するとその人はガンになった挙句に、ガン以外で入院手術しても保険金を受け取れず、さらに亡くなったときに死亡保険金を受け取ることもできなくなってしまいますよね。

そのため契約者救済のために、「大きな病気などになってしまっても、それ以降の保険料が免除され、保険契約を継続できる」という仕組みが保険料払込免除特約なのです。

保険料払込免除特約は加入時に付帯するかどうかを決めなくてはならない


保険料払込免除特約は、任意の特約です。

保険契約時に付けるかどうかを決めなくてはならず、基本的には途中付加はできません。

また保険の特約の多くは、不要になったら外すことができますが、保険料払込免除特約は後から外すことができないことが多いため、保険契約時にしっかりと検討することが必要になります。

特約保険料に注意

保険料払込免除特約にも、保険料がかかります。

その金額は、加入時の年齢や健康状態・保険の内容によって変わります。

若い人なら、月々数百円から、高くても1000円以内でおさまることが多いでしょう。

しかし、長期に渡って継続することが前提の保険では、最終的にはバカにできない金額になる可能性もあるので、注意が必要です。

保険料免除の条件は、保険会社によってさまざま!


保険料払込免除特約の一番の注意点は、「保険会社によって、保険料免除の条件が違う」ということ。

つまり、A社で保険料が免除になった人が、同じ病気の状態でB社に申請しても、免除にならないケースもあるのです。

たとえば、最近はガン検診も進化しているため、初期で発見されやすくなっていますよね。

初期の「上皮内新生物」という状態で見つかったガンは、ステージ判断では「0期」といわれるもので、3年生存率は100%。正しい治療を行えば完治することも多くあります。

契約者側から見ると、初期だろうが重度だろうが「ガンはガン」。

しかし保険料払込免除特約の免除条件に

A社・・・ガン診断時(悪性新生物だけではなく、上皮内新生物も対象)
B社・・・ガン診断時(悪性新生物のみ対象)

と書いてあった場合、初期の上皮内新生物が見つかった人は「A社で加入していた保険では保険料が免除になるが、B社で加入していた保険では免除にならない」ということになるのです。

それらの条件は、すべて保険会社の「約款」に記載されています。

保険料払込免除特約は病名ではなく、状態によって判断される


保険料払込免除特約の免除条件は、「〇〇という病気になったから免除」ということではありません。

その病気を原因として、身体がどのような「状態」にあるのかということで判断されます。

例:急性心筋梗塞

「責任開始日以降に発病し、はじめて医師の診療を受けたその日から、その日を含めて60日以上、労働の制限を必要とする状態が継続したと医師によって診断されたとき」

約款にこう書かれていた場合、ただ急性心筋梗塞で倒れただけでは、保険料払込免除特約は使えません。

・60日を待たず、仕事に復帰していたら免除されない
・不調が残っていても、医師の診断で仕事に制限はいらないと判断されたら免除されない

ということは、必死に治療をして何とか50日目に仕事に復帰した人は、その後の収入にどんなに不安があっても保険料払込免除特約は使えません。

つまり病名だけでは免除にならないため、「特約を付けていたが、使えなかった」というケースが多いのも事実なのです。

保険料払込免除特約の手続き

これまで見てきたように、保険料払込免除特約で保険料支払いが免除になるかどうかは、自分ではなかなか判断できません。

そのため、「該当するかどうか知りたい」という場合は、保険会社の担当者もしくはコールセンターなどに申し出て、条件の確認及び書類の準備をすることになります。

当然ながら、医師の診断書などの各種書類も必要になるため、手続きにはそれなりの時間がかかると思っておいた方がよいでしょう。

担当者がいるなら、病気が判明し入院・手術などで保険金を申請する段階で、免除になる条件や流れについてあらかじめ確認しておきましょう。

該当したときの手続きがスムーズになります。

保険料払込免除特約は必要?メリットとデメリットまとめ


保険料払込免除特約は、「必要だ」という意見と、「要らない」という意見に分かれる特約です。

そのため、加入する保険の内容や自分の経済状況、健康リスクなどを総合的に判断し、メリットとデメリットを知ったうえで付帯することが大切でしょう。

保険料払込免除特約をつけるメリット

・病気になると保険に新規加入できなくなるが、保険契約を維持することができる
・保険料の支払いを気にせずに、治療に専念することができる
・医療保険以外で病気への経済的備えがないときは、大きなお守りとなる

保険料払込免除特約のデメリット

・病気にならない可能性もある
・特約の保険料(基本の保険料の1.5割〜2割程度)が加算され、月々の支払いが増える
・契約途中で付加できない、また要らなくなっても途中で外せない
・免除条件が複雑で厳しいため、病気になったからといって免除にはならないことが多い

保険料がそもそも安い場合は、あまりメリットを感じられないでしょう。

たとえば1500円の医療保険なら、収入が減っても何とか支払いができるかも知れません。

しかし家族のために加入している保険に月々15000円支払っている場合は、収入が減ったときの継続が困難になる可能性が高いともいえます。

保険料払込免除特約を付けた方がいい保険、必要ない保険


途中で必要度が変わっても、変更が難しい保険料払込免除特約。

どのような種類の保険になら付けるメリットがあるのでしょうか。

終身医療保険に付けるときはよく考える

一生涯、入院や手術の保障を受けられる「終身医療保険」には、払込の方法がふたつあります。

①一生涯、保険料の払込が続く終身払いタイプ
②60歳など、払込期限までに保険料の支払いを終え、その後は保障だけを維持するタイプ

両方ともに保険料払込免除特約を付けることは可能ですが、安易に付けるのではなく、支払い方法による総額の保険料を計算してから検討しましょう。

①の終身払いタイプの保険なら

保険料払込免除特約を使うときというのは、「自分が重い病気・ケガになってしまい、仕事を失ったとき」。

そのため、歳を取ってからも延々と保険料を払い続ける①のタイプでは、保険料払込免除特約の条件に該当する確率は、当然上がります。

しかし、それまでに支払い続ける特約保険料も、当然大きな額になってしまうため、注意が必要です。

また保険料払込免除特約は途中で外せない、というデメリットを考えると、健康なまま80歳、90歳と過ごすことになっても、保険を維持する限り特約保険料を払い続けなくてはなりません。

②の払込期限があるタイプの保険なら


60歳・65歳までなど期限を付けて保険料の支払いを終わらせる契約の場合、三大疾病などの大きな病気にかかる可能性が低いまま、保険料の支払いを終えることになります。

若いうちの病気に備えたい、医療保険以外で経済的リスクに備えられていない、というケースでは、あくまでお守りとして付けておくのもいいでしょう。

しかし特約が有効な期間が短ければ、特にメリットを感じられないケースもあるので注意しましょう。

収入保障保険には付けるメリットがある

収入保障保険とは、保険期間中に被保険者が死亡してしまったときに、遺族が毎月一定額を受け取ることができる保険。

死亡時にまとめて受け取る生命保険とは違い、死亡保険金を毎月一定額受け取るという保険のため、子育て家庭などにメリットがある保険とされています。

このタイプの保険では、三大疾病などで働けなくなり、保険料の支払いができなくなってしまっては、せっかく備えた遺族への保障も失ってしまいます。

そのため、保険料払込免除特約を付けておくことで、収入が減ったあとも保険料の支払いを気にせず治療に専念し、また遺族への保障もキープできるといえます。

ただし、収入保障保険以外の保険契約とバランスを取ることも必要なため、やみくもに付けるのはNG。

特約保険料・期間などを総合的に判断することが必要です。

保険料払込免除特約まとめ

病気はいつなるか分かりませんし、また長く付き合っていかなくてはならないケースも多くありますよね。

医療保険はそもそも、病気やケガの際の経済的リスクに備えるものですから、その備えを完璧にしたいなら、保険料払込免除特約は検討に値する場合もあります。

保険契約で一番やってはいけないのは、「よく分からないまま契約してしまうこと」。

保険料払込免除特約についても、長期的な目線で考えることが大切です。

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